n8nの料金プランと、セルフホストとの損益分岐点|実際に構築して比較した
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「セルフホストは無料」の一言で判断すると、たいてい損をする
n8n の料金を調べると、ほぼどの解説にも「セルフホストすれば無料」と書かれています。私も最初はそう理解して、実際にWindows環境に構築しました。
構築してみて分かったのは、この説明が判断材料として不完全だということです。
- 無料なのは「ソフトウェアの利用料」だけ
- 常時稼働させるならサーバー代が別途かかる
- そして、サーバーの管理時間が計算に入っていない
この記事では、実際に構築した経験をもとに、どこから有料版の方が得になるのかを数字で整理します。
先に結論
| あなたの状況 | 選ぶべきもの |
|---|---|
| まず試したい・学習したい | ローカル構築(0円) |
| 常時稼働させたい & サーバー管理が苦にならない | VPS+セルフホスト(月1,000〜1,800円) |
| 常時稼働させたい & 管理に時間を使いたくない | n8n Cloud(€24〜) |
| 実行回数が月2,500回を超える | プランの実行回数から逆算する |
損益分岐は「金額」ではなく 「自分の時給」 で決まります。理由は後述します。
n8n Cloudの料金プラン
公式の料金ページを確認した内容です(調査時点)。

| プラン | 年払い(月あたり) | 実行回数 | 提供形態 |
|---|---|---|---|
| Starter | €20 | 月2,500回 | n8nがホスティング |
| Pro | €50 | 月10,000回 | n8nがホスティング |
| Business | €667 | 月40,000回 | セルフホスト |
| Enterprise | 個別見積 | 個別 | ホスティング / セルフホスト |
月払いにすると約2割高くなります(年払いで17%割引)。Starterなら月払いで€24前後の計算です。
料金体系で押さえるべき点が3つあります。
1. ユーザー数・ワークフロー数では課金されない 利用人数、作成できるワークフローの数、1つのワークフローに置けるステップ数、使える連携先——これらはプランに関係なく無制限です。ページにも「All plans include unlimited users & Workflows and every integration」と明記されています。
2. 価格を決めるのは「実行回数」だけ 料金が上がる理由は実行回数のみです。分かりやすい反面、契約前に自分の実行回数を見積もる必要があるということでもあります。
3. クレジットカードなしで試せる StarterとProには「Start free trial / No credit card required」と書かれています。カード登録なしで動かせるので、実行回数の見積もりに自信がなければ、まず試してから決めるのが確実です。
見落としやすい:Businessプランは「セルフホスト」
ここが重要です。料金表を見ると、**€667のBusinessプランの提供形態が「Self-hosted」**になっています。
「セルフホスト=無料」と理解していると混乱しますが、正確には次の2つが別物です。
- セルフホスト(無償版) — 今回私が構築したもの。機能に制限あり
- セルフホスト(Business以上) — SSO、Git連携、複数環境などが使える有償版
つまり**「セルフホストなら全機能が無料」ではありません。**無償で使えるのは基本機能までです。
プランごとの主な違い
料金以外で差が出るのは、実行回数のほかに以下です。
| Starter | Pro | Business | |
|---|---|---|---|
| 同時実行数 | 5 | 20 | ─ |
| 共有プロジェクト | 1 | 3 | 6 |
| 実行ログの保持 | ─ | 7日 | 30日 |
| AIクレジット | 月2,300 | 月13,700まで | ─ |
| SSO / SAML | ─ | ─ | あり |
**「同時実行数」**は見落としやすい項目です。複数のワークフローが同時に走る使い方をするなら、Starterの5では詰まる可能性があります。
実行回数の見積もり方
ここを外すと、月の途中で止まります。
n8nの「1実行」は、ワークフローが1回起動することを指します。ワークフロー内にノードが10個あっても、1回の起動は1実行です。

上は私が構築時に動かしたものです。ノードが2つありますが、これで消費するのは1実行です。
Starterプランの月2,500回を日数で割ると、1日あたり約83回です。
| 使い方 | 1日の実行回数の目安 | Starterで足りるか |
|---|---|---|
| 問い合わせフォームの通知(1日数件) | 5〜10回 | 十分 |
| 毎朝のレポート自動送信 | 1回 | 十分 |
| SNS投稿の予約実行(1日3回) | 3回 | 十分 |
| 5分おきの定期チェック | 288回 | 超過する |
| ECサイトの注文連携(1日50件) | 50回 | 十分 |
注意すべきは定期実行の間隔です。「5分おきに確認する」設定にすると、それだけで1日288回、月8,640回に達します。Proプランでも足りません。
私が構築時に作ったのは手動実行のワークフローだったので実行回数は数回でしたが、業務に組み込むなら、定期実行の間隔から実行回数を先に見積もってください。
セルフホストの「本当の費用」
ここが本題です。セルフホストは無料ですが、無料なのはソフトウェアだけです。
ローカル構築(自分のパソコン)
費用は0円です。ただしパソコンを閉じると自動化も止まります。
私が実際に構築して分かったのは、これが想像以上に大きな制約だということでした。「毎朝9時にレポートを送る」には、朝9時にパソコンが起動している必要があります。スリープでも止まります。
学習と検証には十分ですが、業務に組み込むには使えません。
VPSに構築(常時稼働)
必要なスペックについて、実際に計測した結果を載せます。多くの解説では「2GB以上を推奨」と書かれていますが、私の環境での実測値はこうでした。
| 項目 | 実測値 |
|---|---|
| メモリ使用量(起動30分後・アイドル状態) | 399MB |
| CPU使用率(同上) | 0.21% |
| データ領域 | 5.5MB |
| イメージのディスク使用量 | 2.26GB |
**アイドル時は400MB程度しか使っていません。**ワークフローの実行中は増えますし、複数を同時に動かせばさらに必要になりますが、「2GB必須」という前提は、小規模な用途には過剰かもしれません。
一方、ディスクは2.26GBのイメージを置く必要があるので、ストレージの少ないプランは避けてください。
国内VPSの目安は以下です(調査時点)。
| プラン | 月額の目安 | 判断 |
|---|---|---|
| 1GBプラン | 500〜900円 | 小規模なら動く可能性。余裕はない |
| 2GBプラン | 1,000〜1,800円 | 無難な選択 |
ただし、費用はこれだけではありません。
| 発生する作業 | 頻度 |
|---|---|
| 初期構築(Docker導入・n8n起動) | 1回 |
| SSL証明書の設定・更新 | 初回+定期 |
| n8n本体のアップデート | 数ヶ月ごと |
| OSのセキュリティ更新 | 定期 |
| バックアップの設定と確認 | 定期 |
| 障害時の復旧 | 不定期 |
これらが「無料」に含まれていません。
損益分岐点は「自分の時給」で決まる
金額だけを並べると、こうなります。
| 月額 | |
|---|---|
| VPS+セルフホスト | 1,000〜1,800円 |
| n8n Cloud(Starter・年払い) | €20(月払いなら€24) |
差額は月あたり2,000〜3,000円ほどです。
ここで問うべきは「どちらが安いか」ではなく、**「サーバー管理に月何時間使うか」**です。
- 月1時間かかるなら → その1時間に2,000〜3,000円の価値があるか
- 月3時間かかるなら → 時給700〜1,000円の作業をしていることになる
私はこの計算をして、本業に時間を使った方が合理的だと判断しました。ただし、サーバーの管理自体が苦にならない、あるいは技術的な経験を積みたいという場合は、VPSを選ぶ理由が十分あります。実際、私の周りでも判断は割れます。
「安いから」ではなく「自分の時間の使い方として妥当か」で選ぶのが、後悔が少ないと思います。
セルフホストで使えない機能がある
もう一点、構築中に気づいたことがあります。
新規作成メニューを開いたとき、「New project」がグレーアウトして [Enterprise] と表示されていました。

ここで一点、注意が必要です。UIには [Enterprise] と表示されていましたが、料金ページを見ると Starter プランから「1 shared project」が含まれています。
つまり「Enterprise契約でしか使えない」わけではなく、正確には**「セルフホストの無償版では使えない」**ということです。UIの表示だけを見ると誤解しやすい箇所でした。
いずれにせよ、「セルフホストなら全機能が無料」という理解は不正確です。社内の業務自動化に使う分には通常問題になりませんが、「全部無料で使える」前提で導入を決めると、後から想定と違うことになります。
ライセンスについて
n8nは Sustainable Use License というライセンスで提供されています。
- 自社の業務で使う → 無料で可
- n8nそのものを再販・SaaS化する → 制限あり
社内の業務自動化という使い方であれば、通常は問題になりません。
まとめ:判断の順序
私が構築を終えて整理した、選び方の順序です。
1. まずローカルで無料で試す そもそも自分の業務に使えるかどうかは、動かしてみないと分かりません。ここは0円でできます。構築手順は別の記事にまとめています。
2. 使えると判断したら、実行回数を見積もる 定期実行の間隔から1日の実行回数を計算します。ここでプランが決まります。
3. サーバー管理に使える時間を考える 月2,000〜3,000円の差額と、自分の時間を比べます。金額ではなく時給で判断します。
4. 迷ったらCloudから始める 後からセルフホストに移すことはできますが、逆は手間がかかります。まず動かして、コストが気になってきたら移行する順序の方が、立ち上がりが速いと思います。
※ 料金・仕様は調査時点のものです。契約前に公式サイトで最新の情報をご確認ください。